【徹底解説】セリアック病・小麦アレルギー・グルテン不耐症の重要な違いとは?症状と原因を一覧比較

最近よく耳にする「グルテンフリー」。

なんとなく体に良さそうというイメージがあるかもしれませんが、その背景には「セリアック病」「小麦アレルギー」「グルテン不耐症(非セリアック・グルテン過敏症)」といった、似ているようで全く異なる3つの症状が関係しています。

「パンを食べるとお腹が張る」
「小麦製品を食べると体調が悪い気がする…」

と感じていませんか?

その不調の原因を正しく理解するために、この記事では3つの症状の根本的な違いを、原因、体の反応、症状、検査方法の観点から分かりやすく解説します。

一目でわかる!セリアック病・小麦アレルギー・グルテン不耐症 比較表

まずは、3つの症状の主な違いを一覧表で確認しましょう。

それぞれ原因となる免疫反応の仕組みが全く異なります。

 

項目 セリアック病 小麦アレルギー グルテン不耐症(非セリアック・グルテン過敏症)
分類 自己免疫疾患 食物アレルギー(IgE抗体が関与) 上記いずれでもない不耐症
原因物質 グルテン 小麦に含まれるタンパク質全般 グルテン(または他の成分の可能性も)
体の反応 グルテンをきっかけに、自身の小腸を攻撃してしまう 小麦を異物とみなし、免疫システムが過剰に反応する 免疫反応のメカニズムは不明確
症状の発現 数時間~数日後(慢性・遅延型) 数分~2時間以内(即時型が多い) 数時間~数日後(遅延型)
主な症状 腹痛、下痢、便秘、体重減少、疲労感、貧血、皮膚炎 じんましん、かゆみ、呼吸困難、腹痛、嘔吐、アナフィラキシー 腹部膨満感、頭痛、倦怠感、集中力低下(ブレインフォグ)
検査方法 血液検査(抗体)、小腸の生検 血液検査(特異的IgE抗体)、皮膚テスト、経口負荷試験 セリアック病と小麦アレルギーを除外後、除去食で判断


セリアック病とは?

セリアック病は、単なる不耐症ではなく、遺伝的素因を持つ人がグルテンを摂取することで引き起こされる「自己免疫疾患」です。

自分の免疫システムが、栄養を吸収する小腸の組織(絨毛)を誤って攻撃してしまいます。

原因:グルテンが引き起こす自己免疫反応

セリアック病の引き金は、小麦、大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質「グルテン」です。

グルテンが体内に入ると、免疫システムがそれを異物と誤認し、小腸の粘膜を攻撃する自己抗体を作り出してしまいます。

これにより、栄養素の吸収に不可欠な小腸の絨毛が萎縮し、様々な吸収不良症状を引き起こします。

主な症状

症状は非常に多岐にわたります。

典型的な消化器症状だけでなく、栄養吸収が妨げられることによる全身の不調が現れるのが特徴です。

  • 消化器症状:慢性的な下痢、腹痛、便秘、腹部膨満感
  • 吸収不良による症状:体重減少、鉄欠乏性貧血、疲労感、骨粗しょう症
  • 皮膚症状:疱疹状皮膚炎(かゆみの強い水疱)
  • その他:口内炎、頭痛、関節痛

検査と診断

診断には専門的な検査が必要です。

まずは血液検査でセリアック病に特有の自己抗体(抗tTG抗体など)を測定します。

陽性の場合は、確定診断のために内視鏡を使い小腸の組織を採取する生検が行われます。

 

小麦アレルギーとは?

小麦アレルギーは、セリアック病とは異なり、小麦に含まれるタンパク質を異物(アレルゲン)と認識し、免疫システムが過剰に反応する「食物アレルギー」の一種です。

原因:IgE抗体が関わる免疫の過剰反応

体が小麦タンパク質に対して「IgE抗体」という特別な抗体を作ってしまうことが原因です。

再び小麦が体内に入ると、このIgE抗体が反応し、ヒスタミンなどの化学物質が放出され、アレルギー症状を引き起こします。

グルテン以外のタンパク質(アルブミン、グロブリンなど)も原因となり得ます。

詳しくは、消費者庁のウェブサイト「食物アレルギー表示に関する情報」もご参照ください。

主な症状

多くの場合、食べてから2時間以内に症状が現れる「即時型」です。

時には命に関わる重篤な症状(アナフィラキシー)を引き起こすこともあります。

  • 皮膚症状:じんましん、赤み、かゆみ、むくみ
  • 呼吸器症状:くしゃみ、鼻水、咳、息苦しさ、ぜん鳴
  • 消化器症状:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
  • 重篤な症状:アナフィラキシーショック(血圧低下、意識障害など)

検査と診断

主に血液検査で小麦に特異的なIgE抗体の量を測定したり、皮膚プリックテスト(アレルゲン液を皮膚に垂らして反応を見る)が行われます。

最も確実な診断方法は、専門医の管理下で原因食物を少量ずつ摂取して症状を確認する「食物経口負荷試験」です。

グルテン不耐症(非セリアック・グルテン過敏症)とは?

グルテン不耐症は、「非セリアック・グルテン過敏症(NCGS)」とも呼ばれ、セリアック病と小麦アレルギーの両方が否定された上で、グルテンを摂取すると不調が現れる状態を指します。

原因:いまだ不明確なメカニズム

セリアック病のような自己免疫反応や、小麦アレルギーのようなIgE抗体が関与するアレルギー反応は見られません。

なぜグルテン摂取で症状が出るのか、その詳細なメカニズムはまだ完全には解明されていません。

グルテン以外の成分(FODMAPなど)が影響している可能性も指摘されています。

主な症状

症状はセリアック病と似ている部分もありますが、多岐にわたり、個人差が大きいのが特徴です。

  • 消化器症状:腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘
  • 全身症状:倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛
  • 精神・神経症状:集中力の低下、頭がぼーっとする「ブレインフォグ」

検査と診断

グルテン不耐症を直接診断するマーカーはありません。

そのため、まずは血液検査などでセリアック病と小麦アレルギーの可能性を完全に除外することが第一です。

その上で、医師の指導のもとで一定期間グルテンを除去する食事を試し、症状が改善するかどうか、そして再度グルテンを摂取して症状が再発するかどうかで判断する「除去・負荷試験」によって診断されます。

自分で判断は危険!気になる症状があれば専門医へ

「自分はグルテン不耐症かも?」と感じても、自己判断でグルテンフリー生活を始めるのは避けるべきです。

なぜなら、その不調の裏にセリアック病などの他の病気が隠れている可能性があるからです。

特にセリアック病の検査は、グルテンを摂取している状態でないと正しい結果が出ません。

自己流でグルテンフリーを始めてしまうと、正確な診断が困難になります。

何科を受診すればいい?

気になる症状がある場合は、まずは以下の診療科を受診することをお勧めします。

  • 消化器症状が主の場合:消化器内科、胃腸科
  • じんましんなどアレルギー症状が主の場合:アレルギー科、皮膚科
  • お子様の場合:小児科、小児アレルギー科

専門医に相談し、適切な検査を受けて、ご自身の不調の原因を正しく突き止めることが健康への第一歩です。

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まとめ

セリアック病、小麦アレルギー、グルテン不耐症は、いずれも小麦やグルテンが関連する不調ですが、その原因と体への影響は全く異なります。

  • セリアック病:グルテンが引き金となる「自己免疫疾患」
  • 小麦アレルギー:小麦タンパク質に対する「アレルギー反応」
  • グルテン不耐症:上記2つが否定された上での「グルテンへの過敏症」

これらの違いを正しく理解し、もし体に不調を感じたら、まずは専門の医療機関に相談することが非常に重要です。

正しい知識で、ご自身の体と向き合っていきましょう。